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解説シリーズ ハイエース リフレッシュプラン。実作業編その4  サスペンション整備の必須作業。車高とホイールアライメント調整作業。1G締付もお忘れなく!!

香川県から依頼されたハイエース LH178 ディーゼル4WD のリフレッシュプラン。

平成16年式 走行距離が25万キロの車両ですが、バッシと走るハイエースに戻すリフレッシュ作業を行いました。


予約編
http://minato-motors.com/blog/?p=31100全4部

実作業編
http://minato-motors.com/blog/?p=31171その1~3まで

今回の実作業編その4では、サスペンションやブレーキ・ハブ等の足回り下回り整備が完了したので、次のステップに進みます。

サスペンションのアームブッシュを交換して、ショックアブソーバーも交換しました。

タイヤを装着して整備リフトからアライメントリフトに移動します。


ハイエースのサスペンションは乗用車に比べると少し特殊で、フロントのみ車高が調整出来ます。

リアはリーフスプリングなので高さは固定なのですが、重い荷物を常時積み込みしていると、スプリングがヘタって車高が徐々に変動します。


劣化具合や使用用途に合わせてフロント車高を調整出来るのが、ハイエースの特徴。


街でハイエースを見た時に、お尻が下がって走行しているハイエースを見た事はないですか?    フロントが上がり、リアが下がった状態で走行するとブレーキの効きも悪いですし、走行安定性も低下しますよ。


ハイエースの整備書には各モデルに対して、リア車高の基準値があります。

A・リアはリーフスプリング前側のブッシュボルト中心から地面までの高さ。
B・フロントはロアアーム前側のアジャストボルト中心から地面までの高さ。


リアのブッシュボルトから地面までの高さを測定し、リア基準値(A)と比べる。


基準値Aよりも測定値Aが10mm短かったと仮定すると、フロントは基準値Bから10mmマイナスで調整値Bを割り出します。

簡単に言えばリアが10mm下がっていれば、フロントは基準値より10mm下げて高さ調整するんですよね~。


今回はフロントの車高が下がり過ぎていたので、リアの測定値から計算してフロント車高を微調整しました。


もちろん左右のロアアームのボルトの高さも合わせますよ。

車高が決まれば、そこから交換したブッシュやショックアブソーバーのボルトを(1G締付)します。

・タイヤ4輪が接地した状態にする。
・固定していたブッシュボルトを一度緩める。
・ブッシュのテンションが開放される。
・テンションフリーの状態でボルトを本締めする。



リフトアップして整備をしている状態は、サスペンションアームは伸びています。(垂れ下がる。)

リフトアップした状態で本締めすると、4輪が接地した状態(1G状態)ではアームが上方に角度を変えてブッシュがグニュッと捩じれます。

捻じれてテンションが掛かった状態で走行すると、せっかく交換したゴムブッシュが早期に劣化し、最悪破断します。

1G状態でブッシュのテンションをフリーにして、本締めするのが(1G締付)というサスペンション整備の必須作業。

1G締付後に軽く試運転。
交換したサスペンション部品を馴染ませます。


そしてやっとココからホイールアライメント調整を行いますね。




・アライメントリフトはイヤサカ ビシャモンマルチアライメントリフト。
ロングバージョンの特注レッドを使用しています。

国産最高峰のリフトのビシャモンリフト。
高剛性で水平レベルを長期に維持します。


ホイールアライメントを測定するのは、ハンター社アライメントテスター。
ホークアイWA470 最新鋭のアライメントテスターです。

ホイールに軽量樹脂製ホイールターゲットを装着。  ターゲットをホイールのディスク面にセットしてクランプで挟みます。

ディスク面とターゲットは大体中心付近にセットすればOK。
(アバウトな装着でも、全く問題ありません。)
(ターゲットにはシリコンリングが装着されているので、ホイールには傷が付きません。)



高精度カメラセンサー4基で、ホイールに装着したターゲットの動きを捕捉し、精密なのアライメント数値を瞬時に演算します。


ロアアームのアジャストボルトは中心にセットして測定しても、組み立てただけではバラバラな数値が演算されました。


サスペンション整備ではブッシュ交換やショックアブソーバー交換などをした時には、ホイールアライメント調整をしないと数値が乱れたまま走行する事になります。


真っすぐに安定して走るにはホイールアライメント調整も必須作業なんですよ~。

車体下に潜りこんで、ホイールアライメント調整を行います。

車体下からではPCモニターが見えにくいので、リモコンコントローラーを見ながら調整します。


車種によって手順は違うのですが、今回のハイエースはリアを少し調整してから、フロントの調整を行いました。


特にフロントのキャンバー・キャスター・SAIの微調整がしやすいハイエースですから、入念に調整作業を行いますね。

最後にフロント個別トゥを調整して、ステアリングセンターを合わせます。

フロントの左右の数値も最小限に抑えられて、なかなか良い数値になりました。
メーカー基準値にバランスよく近づけました。


このあとは試運転をして最終チェックを繰り返し、納車連絡をメールで行います。


次回ブログで実作業編もいよいよ最終回。
納車引き渡しからの総括をご案内したいと思います。

それではHappy Car Life!!

解説シリーズ ハイエース リフレッシュプラン。実作業編その3  ここが錆固着していると作業が進まない!! セイバーソーで一刀両断。

ハイエース LH178のリフレッシュプラン。

予約編から実作業編に変わり、やっと(その3)まで進んで来ました。

http://minato-motors.com/blog/?p=31171 その1
http://minato-motors.com/blog/?p=31218その2


今回は乗り心地や直進安定性に大きく影響するサスペンションアームブッシュの交換などを紹介します。


降雪地・塩害地で使用していたハイエースは、高確率でFrロアアームのブッシュの内径とアジャストボルトが錆固着しています。


・こうなるとボルトが抜けないので、アームが外せずブッシュ交換が出来ない。
・アジャストボルトが回せないので、ホイールアライメント調整が出来ない。



でっかいハンマーで叩こうが、バーナーで炙ろうが、全く抜けない場合が多いのです。


そこで登場する工具がコレ。

セイバーソー 電動ノコギリみたいな工具で、主に建築解体屋さんが使用するそうです。

これでアームやフレームを傷付けずに、ブッシュのカラーとボルトを一刀両断します。


固着したブッシュに対して、カットする個所は前後2か所。

幅5mmほどの隙間に超硬刃(極厚物切断用)を使用して、ボルトとブッシュカラーを切断します。


ボルトの直径が15mmで、ブッシュの金属部厚みが2ミリほど。
合わせて約17mmの鉄棒をセイバーソーでカットするのは、非常に大変。
(熱でスグに刃がナマリます。)

木材や軟鉄の板状ならサクッとカット出来ますが、18mmの鉄棒となるとそう簡単にはカット出来ないのです。

大体1カットするのに15分。ブッシュの前後をカットすると30分以上は掛かりますね。

ちなみにロアアームの4つのブッシュが全錆固着していれば、2×4で8カット必要。  ロアアームを外すだけで、軽く2時間以上は掛かるのです。


もし錆固着が無ければ、5分もあれば左右のロアアームが外せるのですが・・・錆固着があると時間は大幅に増えるのですよね。


ロアアームが外れたので、ブッシュを打替えますね~。

中空タイプのロアアームからブッシュを打ち抜くのには、SST(特殊工具)が必要です。


ロアアームを破損させないように、SSTを使用して交換しました。
またブッシュの位置も決まっているので、マーキングしてから交換しています。





リアのリーフスプリングのブッシュも打替えます。

4か所の内の1か所が錆固着していましたので、セイバーソーでカットしてリーフスプリングを外しました。


グラインダーが使えれば簡単にカット出来るのですが、残念ながら隙間が狭いのでグラインダーの刃が入らないんですよね。


リーフスプリングを油圧プレスにセットして、ブッシュ交換をします。


左右のリーフスプリングブッシュ交換が完了しました。


本当はシャックルブッシュも交換したかったのですが、LH178の構造上、燃料タンクを降ろさないと交換出来なかったので、今回は保留としました。




リアハブベアリング交換。

シャフトからベアリングを外して、シールとベアリングをSSTを使用して交換します。定番の整備個所ですね。





ホーシング側のインナーオイルシールも打ち直し。

ブレーキシリンダのカップキットも交換しました。




フロントスタビライザーのブッシュ全数交換。
丸いブッシュが5個×左右。 インナーブッシュが左右2個

錆と摩耗で擦り減ったリテーナーも交換しました。



エンジン・ATマウントを全数交換しますね。

エンジンを持ち上げずに、サブフレームを降ろしてマウント交換するのは、なるべくハーネスやホースに負担を与えず安全に交換したいから。

マウントを交換すれば、ボディに伝わるエンジン振動が大幅に軽減されますよ~。




アッパーアームやロアアーム。
ブレーキやハブ、ドライブシャフトやナックル。
ショックアブソーバー全数

順番に組付けていきますね。

ブレーキフルード交換とエア抜き作業。

前後のデフやトランスファのギアオイルはガルフ プロガード75W90LSD対応を注入。

錆固着したロアアームのアジャストボルトには、今後錆び付かないようにボルト首下部分に薄くグリスを塗っておきます。


これで錆固着は当分大丈夫でしょう。

こんな感じでサスペンションやブレーキ、ハブやドライブシャフトなどを整備して、やっとリフトからハイエースが降りました。





次回ブログでは1G締付や車高調整、ホイールアライメント調整の作業を紹介しますね。  これでサスペンション整備の出来栄えが大きく変わるので、要チェックですよ~。

それではお楽しみに~!!

解説シリーズ ハイエース リフレッシュプラン。実作業編その2 純正・社外の部品の使い分けは慎重に。

(解説シリーズ 実作業編その1)でハブとディスクローターを整備しましたね。http://minato-motors.com/blog/?p=31171


(実作業編その2)では作業工賃が重複する個所も同時に整備します。


リフレッシュプランでは関連するかつ工賃が重複する個所を中心に、全体的な予算を見て整備計画を実施しましょう!とアナウンスしています。


ディスクローターを整備したので、関連性のあるブレーキキャリパーもO/Hします。


昔はよくフルード漏れを起こしていたキャリパーも今ではすっかり漏れる事も無くなりました。(シール自体のシーリング性能が向上。)


ですがキャリパーのゴムシールは(フルード漏れを防ぐシーリング性能)だけではなく、(シール柔軟性によるパッドクリアランス調整機能)の含んでいるのです。


10年10万キロも使用すれば、シールの柔軟性が低下し調整機能が低下する。


(フルード漏れが無いから、キャリパーの整備はしなくても良い)は間違っているのです。

キャリパーからピストンを外すと、内部のグリスが硬化していました。

黒く硬化したグリスがシールに引っ掛かり、異音や片効きの原因になりますよ。またグリスが劣化していると防水性が低下しますので、錆の原因にもなります。



キャリパーをキレイに完全洗浄しました。
ピストンも洗浄してコンパウンドで磨き上げ。


輪ゴムみたいなのがピストンシールとダストブーツです。

・シールの硬化による柔軟性の低下。
・ピストンに付着したグリスの硬化による引っ掛かり。
・ダストブーツの気密性低下で雨水侵入。

ピストンがスムーズにスライドし続けないと、異音や振動、片効きやパッド偏摩耗になるのですよね。




ホルダー側のスライドピンも重要な役割があります。

内部に水の混入などで錆びたり、グリスが硬化すると、キャリパーが平行にスライドしません。  そうなれば異音や振動、偏摩耗の原因になるのですね。




スライドピンホールの硬化したグリスを、パーツクリーナーで洗い流し。
スライドピンも洗浄してブッシュを交換します。

スライドピンとホールにグリスを馴染ませて、ダストブーツを打替えますね。

パットが装着する部分の座金を磨いてあげればOKです。


必要な個所にだけ適切なグリスを使用し、必要のない箇所にはグリスは塗らない。


ブレーキパッド交換時にキーキー音が鳴るからと言って、ホルダー部の座金にグリスを塗るのはNGです。 異音の原因はそこじゃないんですよね。



ブレーキパッドも交換します。


パッド裏にあるバックシムの硬化したグリスは、パーツクリーナーで拭き取ります。

パッドとシムの間にはWAKO’S BPR高性能パッドグリスを前面に薄く塗りますね。


こうするとグリス粘度で振動による共振を防ぎ、異音が出ません。
また全面に塗る事によりシムとパッドの間に水分が入らないので、シムが錆びません。


安価なブレーキパッドグリスだと(持って2年)ですが、このグリスなら4年は低温から高温まで安定したグリス性能を発揮してくれますよ。

ナックルもこんな機会しか整備をする時がないので、シール交換・グリス交換・ロアボールジョイント交換を行いました。





ドライブシャフトもO/Hします。

実はこのドライブシャフトは他社で社外品ブーツでのO/H済み。  ですがブーツ自体が悪いので、弊社で再O/Hする事になりました。

まずはインナーブーツ。
社外品を使用しており、特に破損はなさそうに見えますよね。

このブーツの蛇腹の山は本来は4つ。ですが左から数えて3つ目と4つ目の山が接触しています。

蛇腹の一部が摩耗して接触しているのが分かりますか?




指で広げると摩耗している個所が見えました。


断面を見てみると、どうですか??
ゴムが擦り減って摩耗していますよね。


このまま使用すればどこかのタイミングでまたブーツが破れて、中のグリスが飛び散るでしょう。



次はアウター側のブーツです。
真ん中に筋が見えますよね。これ分割式の通称(割れブーツ)です。


中を確認すると、充填されているグリスが少ない。というかほぼ無い。


そうなんです。割れブーツの場合は(割れ)の部分に接着剤を付けて組付けます。  グリスが多いと接着不良になりやすいので、あえて付属のグリス量が少ないんですよね。


適量時よりもグリスが少ないと、グリスの劣化スピードは速くなります。

同じグリス性能で片方が規定充填量の半分、片方が規定充填量なら(劣化しずらい長持ちする)のは断然グリスが多い方です。


割れブーツの付属グリスは耐久性よりも作業性を優先したグリス量なんでしょうね。

ドライブシャフトを洗浄しました。
純正シャフトブーツグリスKITで組立しますね。

アウター側のグリスを規定充填量を使い、アウターブーツを組み立てました。

割れブーツの3倍以上はグリスがありますね。


そしてこの状態でブーツを装着し走行すると、遠心力でベアリング内のグリスが常に循環します。


次にこれがインナー側の純正ブーツです。蛇腹の山は社外品と同じ4つ。

ですが純正ブーツは赤い印の間隔が、他の山谷の間隔よりも広めになっているんですよね。

そもそもゴムの蛇腹が接触しないように設計されています。




グリスを注入しブーツ装着して、インナーブーツを新旧比べてみましょう。

純正品と社外品との違いがよく分かりますね。



少し安い社外品を使って、その場しのぎの整備で、目前の車検を合格するだけなら、別に問題はないでしょう。(数千円の節約が出来ますからね。)



ですがリフレッシュプランは10年10万キロ以上使用した車両を、もう一度新車時に近づける整備メニューですので、こういう社外品は使わないようにしています。


ただし年式が古く、部品製造が終了していれば話は別です。

点検時に気が付いた錆の摩耗粉。
いつもならこんなところに錆は無いんですけどね・・・。



手で部品を揺するとガッタガタ。摩耗でクリアランスが広がっています。


通常こうなれば試運転時の異音で見当はつくのですが、今回の試運転では分からなかったのです。

何故ならリアゲートのウェザーストリップゴムの破損と、リアスライドドアのレール破損で、試運転時はドアからの激しい異音があり、その他の音が全く聞き取れなかったのです。


走行中に大小強弱の異音が多すぎると、危険な異音までが掻き消されるので注意が必要です。



幸いデフケース側ではなく、ベアリング側が摩耗していたので、予定通りハーフシャフトの中間ベアリングを交換しました。


これでこの個所の危険な異音は無くなりました。

こんな感じで作業は進み、次回ブログでは錆固着の難題を解決します。


ロアアームの錆固着からロアアームなどのブッシュを打替え作業を紹介しますね。  それではHAPPY CAR LIFE!!



解説シリーズ ハイエース リフレッシュプラン。実作業編その1  ハブとディスクローターの関係性。

香川県からお越しになられたのはトヨタ ハイエースLH178 ディーゼル4WD 走行距離25万キロ

提案型整備リフレッシュプランのご依頼です。

解説シリーズ1~4で予約から整備プラン決定までのプロセスを紹介しましたね。
http://minato-motors.com/blog/?p=31100 その1
http://minato-motors.com/blog/?p=31115 その2
http://minato-motors.com/blog/?p=31124 その3
http://minato-motors.com/blog/?p=31143 その4


今回からは(解説シリーズ実作業編)に突入します。


まずは予定していたサスペンション・ブレーキ・ハブ等をバラバラに分解していきます。



100系のフロントハブは200系のようなベアリングASSYではなく、個別分解が可能な構造になっています。


ベアリングASSYの場合は基本的にはメンテナンスフリー。(悪くなればASSY交換)

ですが分解可能の100系は定期的な給油やプレロード調整が必要なんですよね。

ハブの裏側。 インナーベアリングはシールが劣化してグリスが漏れていますね。


ハイエースは乗用車のようにブレーキキャリパーを外せば、ディスクローターが外せる構造ではありません。

ハブを分解し裏側のボルトを外すと、ディスクローターが外せるのです。



ハブの分解整備は10万キロ毎だとすると、ディスクローターもその時に整備した方が余計な工賃が節約できますね。

ハブとディスクローターを分解しました。

何もせずにボルトを外してこの状態にするのは、NGです。ボルトを外す前に(ある作業)をしてから、ディスクローターを外しました。

そのあたりは何をしたかは伏せますね。


外したベアリングを観察すると、よく分からないメーカーのベアリングでした。
調べてみると中国製?なのかな?以前にどこかで交換歴があるようですね。


今回は調整ではなく、O/Hしてベアリング類は全交換します。

純正はもちろん日本製。 正直こういう部品は日本製以外を使う選択肢は弊社には無いかな。  


こうなると以前に交換したシールも、純正を使っていたかが疑わしい。


ハブの中もベアリングにもグリスを充填して、シールを打ち込みO/H完了。



ディスクローターもレコード盤状の筋が入っていますね。

このままブレーキパッドを装着すると異音が発生する可能性があります。
それに熱による歪みが発生している場合もあるでしょう。


国産車の場合ディスクローター消耗品ではなく、再生可能部品です。
弊社ではブレーキパッド交換時には、ディスクローター研磨は必ずセットで行っています。


限度厚を確認しながら研磨機にて再生しますね。


スター社製のディスクローター研磨機。
http://minato-motors.com/blog/?p=14924詳しくはこちら。



均一に薄く薄く、表面を一皮剥くように削っていきます。


研磨と言うとガッツリ削っているイメージがありますが、実際はほんの少し削って整えている程度。

逆に歪みや凹凸が酷く、何度も削らないといけない場合は、厚みが薄くなりすぎるので要交換ですよ。


つや消しブラック耐熱塗装を実施して、再生完了。


ブレーキパッドが当たる部分は、研磨されて鈍く光を反射していますよね。
ローターがツルツルの鏡面仕上げに光っていれば、逆にブレーキの効きは悪いですよ。

一度愛車のブレーキディスクを覗いてみてください。
レコード盤状の筋や鏡面仕上げになっていませんか??



ハブとディスクローターを組付けて、ハブベアリングのプレロード調整を行います。その時にはバネ測りを使用しながら調整していす。

その後にディスクローターの振れをダイヤルゲージで確認。基準値以内であればOK。

基準値外だった場合はハブを外して、ディスクローターを外して、また組み直し。 そしてプレロード調整に振れ測定。


結構大変です。


そうならないようにディスクを分解する時には一手間掛けて、組付ける時も何ヵ所かに一手間を掛けると大体1発で決まる。


振れが収まらないと高速走行時のブレーキングで、ジャダーが発生しますよ~。






とりあえず今回のブログではハブO/Hとディスクローター研磨を紹介しました。


これを見ればハブとディスクローター研磨は同時に実施した方が、イイのは分かりやすいですね。


別々の時期に個別整備するのは無駄が多い事が、ご理解いただけたでしょうか?







ハブO/H・ディスクローター研磨と関連する作業と言えば、
・ドライブシャフトO/H
・ナックルシール&グリスアップ
・ブレーキパッド交換
・ブレーキキャリパーO/H

これらも作業重複度が高く、同時に行った方が良い箇所ですね。


次回ブログ(実作業編その2)で上記の整備内容を紹介していきます。
それではお楽しみに!!









解説シリーズ ハイエース100系リフレッシュプラン 予約編その4。腹が決まらないとヤッチャダメな理由。揺れ動くうちはまだ早い。

少し前から連載しているリフレッシュプラン(解説シリーズ 予約編)
http://minato-motors.com/blog/?p=31100 その1
http://minato-motors.com/blog/?p=31115 その2
http://minato-motors.com/blog/?p=31124 その3




その4からは入庫し点検をして、整備プラン制作と御見積までの流れを紹介しますね。


香川県からお越しいただいたハイエース LH178 ディーゼル4WD H16年式 25万キロ走行

最初にするのは試運転。
どの程度のコンディションかを調べます。

・ユーザーさんが言っていた不満点・不具合点が再現できるか?言葉と実車が一致するのか?

・エンジンの加速と振動、ブレーキの効き、サスペンションの劣化・駆動系からの異音など、ファーストインプレッションをメモします。

何年も使用しているからこそ(気が付く点)と、その車両に慣れ切った感覚で麻痺し(気が付いていない点)を炙りだします。





『この車ブレーキの効きが甘いですよね?』と聞いても(いや~そうでもないですけど)と返答される。

『ステアリングのセンターが右にズレていますよね。』と聞いても、(えっ?そこまで意識はしていなかったです。ズレていましたか?)との返答。



(そうそう、そうなんです。そこが気になるんです。)と言う方もいれば、(えっそうですか?気が付かなかったです。)と答える方も多い。




人間の感覚なんて案外そんな感じなんですよね。


試運転が終わればホイールアライメントを測定し、入庫時点のホイールアライメント数値を確認します。


インプレッションと数値を見比べたり、事故などの損傷が残っているかを判定します。


ワンオーナー車なら良いですが、中古車購入の場合は事故損傷が残っている可能性もあるので、目視だけではなく数値で確認しています。


ハイエースは高速走行時の直進安定性はそんなに悪くない。

セダンやスポーツカーとは比べると低いですが、箱型で車高も高く貨物車にしては高速道路での移動は意外と良くて楽なんですよね。

でも上記のようなアライメント数値で、サスペンションの部品もクタクタなら、(そりゃ長距離は、しんどいわぁな~)っと。



距離を走っているからと諦めているハイエースユーザーはいませんか??
それは単純にサスペンションのトータル整備が出来ていないからですよ!!




ガソリン車ならここで排気ガスをテスターで調べて、エンジン燃焼状態を判定しますが、今回はディーゼルなので省略。


また200系ならスキャンツールを使用し、ECUのライブデータを確認しますが、100系はそんなに多くのデータは読み出せないので今回は省きます。


バッテリーアナライザーで充電発電状態を点検し、リフトアップしてタイヤを外し、下回り・足回り・エンジンATなどを点検。


アナログ・デジタル両面から点検し、車両コンディションを見極めます。


オイル漏れやガタ・錆腐食なども診ながら車両全体をチェック。


ハイエースやクロカン車、降雪地域からの依頼は、点検時にサスペンション部品の主要ボルトナットを一度緩めます。(仮緩め作業)


仮緩め作業って何??と思いますよね。
整備プラン見積をする時には必要なんです。


ハイエースの典型的な要確認個所と言えば、フロント ロアアームのアジャストボルト錆固着。


ロアアームとサブフレームを結合している個所のボルトが、錆で固着し引き抜けないと、ロアアームがボディーから外れません。

またこのボルトは固定する為のボルトだけではなく、フロントキャンバー・キャスターを調整するためのアジャストボルトになっています。


のちにロアアームのブッシュを全数打替えするので、車体からロアアームを外さないと作業が進まないのです。



サブフレーム側のボルト穴が楕円形になっていますよね。固定するだけなら丸い穴なんです。

ボルトワッシャーも丸型ではなく、扇状の形で穴の位置も偏心しており、これを回転させてアームをズラし、ホイールアライメント調整を行う重要個所。



スポーツカーのホイールアライメント調整は実施する方が多いです。  ですが貨物車にホイールアライメント調整を実施するユーザーは少ないので、ここが錆固着していることに気が付いていないんですよね。




いやぁ~もったいない。 ハイエースはアライメント調整個所が多い車種なので、新車時から定期的にやった方がイイんですけどね。



このようにボルトが外れない、もしくは折れるなどを工賃に反映させて御見積をするので、点検時には(仮緩め作業)が必要なんです。

今回は段付偏摩耗したブレーキパッド、破れているダストブーツ、不自然な個所にある摩耗粉などを確認して、整備プランを制作しました。



・お聞きしている整備予算
・問診時に聞いた不具合点や改善ポイント
・点検から分かる要整備個所

予算と現状と今後の使用を考慮して、オススメの整備プランを制作し、予算に収まるように御見積をしています。


リフレッシュプランの本質はリフレッシュ整備をする事だけではなく、愛車をリフレッシュするプランニング(計画)にあります。


リフレッシュプランという画一的な整備メニューがある訳ではなく、各車両毎に整備計画を制作し提案する。


分かりやすくカッコよく言えば(オーダーメイドの整備提案)ですかね。


基本的には1台1台違うので、(ブログその1)で聞かれる、『リフレッシュプランっていくらですか??』の問いには正確には答えられないのです。
http://minato-motors.com/blog/?p=31100


だから過去の類似作業の概算金額を参考程度で、問い合わせ時にお伝えしているんですよね。

稀にあるのが(リフレッシュプランの作業はするか?どうか?は分からないけど、リフレッシュプランの点検と見積だけして下さい。)という依頼。

申し訳ございませんが、お断りさせていただいています。



(見積次第でやろうかな??)(乗り換えも視野に入れてる!)という曖昧な方は、絶対にリフレッシュプランのような大規模整備は止めた方がいいです。(高確率で後悔するので)




リフレッシュプランを実施する方はもう(腹は決まっています。)

長年使用した相棒をもう一度新車時に近い状態に戻す整備は、相応の費用が掛かるので、相応の覚悟も必要です。

弊社側が(どうですか~やりませんか~)と提案する前に、本人が(やりたいんだ!!)と決めている場合が多いですね。



老婆心ながら(気持ちが揺れ動いている時)は、リフレッシュプランを実施するのはまだ早いと思っています。



このようにして点検をして整備プランを制作し、お見積りも行っています。

点検結果と整備内容は箇条書きにし、御見積書はメールに添付して送信しています。


・○○の個所はこうなっていますので、このように整備します。

・△△が破損しており異音の原因はここですから、要整備個所です。

・気にしていた○○は、現時点では経過観察で良いと思います。もし整備するならこのようにしてはどうでしょうか?



PDF化した御見積書とメール文を読んでもらい、弊社に折り返しTELをしてもらいます。

お互いが御見積書を見ながらTELで整備内容を説明。
予算オーバーの部分は協議の上削除し、不足分があれば再計上します。

予算と現状を相談しながら、ベストもしくはベターな整備プランを決めるのですね。



弊社の意見を押し付ける事もないですし、ユーザーさんが勘違いしている時は詳しく説明をしていますのでご安心ください。


(もしこのハイエースが私の愛車なら、限られた予算でどのように整備するか?)

リフレッシュプランを提案する時に、いつもこの言葉を思い返しています。



一般ユーザーで車に詳しい人でも、整備手順までは詳しくない。

ドライブシャフトの整備はブレーキとハブナックルの奥にあるので、3点を同時に整備した方が重複工賃が省略されます。


サスペンションをバラバラに分解した状態なら、簡単に交換が出来るエンジンマウントも、サスペンション・ブレーキはそのままでマウントのみ交換すると大変な場合もありますよ。



整備歴や車種特有の分解手順などを整備士側が理解して、無駄な整備工賃が掛からない方法で整備プランを計画する。


個人的には無駄な工賃を使うなら、その分は部品代に充てた方が絶対良いよと思っていますので。


これでやっと予約からプラン提案・作業開始まで説明が出来たのかな。


次回ブログからは解説シリーズ(実作業編)になります。
ハイエースLH178がどのように整備して、どのようになっていくのかを解説したいと思いますね。


お楽しみに~!!HAPPY CAR LIFE!!