解説シリーズ ハイエース100系リフレッシュプラン 予約編その4。腹が決まらないとヤッチャダメな理由。揺れ動くうちはまだ早い。
少し前から連載しているリフレッシュプラン(解説シリーズ 予約編)
http://minato-motors.com/blog/?p=31100 その1
http://minato-motors.com/blog/?p=31115 その2
http://minato-motors.com/blog/?p=31124 その3
その4からは入庫し点検をして、整備プラン制作と御見積までの流れを紹介しますね。
香川県からお越しいただいたハイエース LH178 ディーゼル4WD H16年式 25万キロ走行
最初にするのは試運転。
どの程度のコンディションかを調べます。
・ユーザーさんが言っていた不満点・不具合点が再現できるか?言葉と実車が一致するのか?
・エンジンの加速と振動、ブレーキの効き、サスペンションの劣化・駆動系からの異音など、ファーストインプレッションをメモします。
何年も使用しているからこそ(気が付く点)と、その車両に慣れ切った感覚で麻痺し(気が付いていない点)を炙りだします。
『この車ブレーキの効きが甘いですよね?』と聞いても(いや~そうでもないですけど)と返答される。
『ステアリングのセンターが右にズレていますよね。』と聞いても、(えっ?そこまで意識はしていなかったです。ズレていましたか?)との返答。
(そうそう、そうなんです。そこが気になるんです。)と言う方もいれば、(えっそうですか?気が付かなかったです。)と答える方も多い。
人間の感覚なんて案外そんな感じなんですよね。
試運転が終わればホイールアライメントを測定し、入庫時点のホイールアライメント数値を確認します。
インプレッションと数値を見比べたり、事故などの損傷が残っているかを判定します。
ワンオーナー車なら良いですが、中古車購入の場合は事故損傷が残っている可能性もあるので、目視だけではなく数値で確認しています。
ハイエースは高速走行時の直進安定性はそんなに悪くない。
セダンやスポーツカーとは比べると低いですが、箱型で車高も高く貨物車にしては高速道路での移動は意外と良くて楽なんですよね。
でも上記のようなアライメント数値で、サスペンションの部品もクタクタなら、(そりゃ長距離は、しんどいわぁな~)っと。
距離を走っているからと諦めているハイエースユーザーはいませんか??
それは単純にサスペンションのトータル整備が出来ていないからですよ!!
ガソリン車ならここで排気ガスをテスターで調べて、エンジン燃焼状態を判定しますが、今回はディーゼルなので省略。
また200系ならスキャンツールを使用し、ECUのライブデータを確認しますが、100系はそんなに多くのデータは読み出せないので今回は省きます。
バッテリーアナライザーで充電発電状態を点検し、リフトアップしてタイヤを外し、下回り・足回り・エンジンATなどを点検。
アナログ・デジタル両面から点検し、車両コンディションを見極めます。
オイル漏れやガタ・錆腐食なども診ながら車両全体をチェック。
ハイエースやクロカン車、降雪地域からの依頼は、点検時にサスペンション部品の主要ボルトナットを一度緩めます。(仮緩め作業)
仮緩め作業って何??と思いますよね。
整備プラン見積をする時には必要なんです。
ハイエースの典型的な要確認個所と言えば、フロント ロアアームのアジャストボルト錆固着。
ロアアームとサブフレームを結合している個所のボルトが、錆で固着し引き抜けないと、ロアアームがボディーから外れません。
またこのボルトは固定する為のボルトだけではなく、フロントキャンバー・キャスターを調整するためのアジャストボルトになっています。
のちにロアアームのブッシュを全数打替えするので、車体からロアアームを外さないと作業が進まないのです。
サブフレーム側のボルト穴が楕円形になっていますよね。固定するだけなら丸い穴なんです。
ボルトワッシャーも丸型ではなく、扇状の形で穴の位置も偏心しており、これを回転させてアームをズラし、ホイールアライメント調整を行う重要個所。
スポーツカーのホイールアライメント調整は実施する方が多いです。 ですが貨物車にホイールアライメント調整を実施するユーザーは少ないので、ここが錆固着していることに気が付いていないんですよね。
いやぁ~もったいない。 ハイエースはアライメント調整個所が多い車種なので、新車時から定期的にやった方がイイんですけどね。
このようにボルトが外れない、もしくは折れるなどを工賃に反映させて御見積をするので、点検時には(仮緩め作業)が必要なんです。
今回は段付偏摩耗したブレーキパッド、破れているダストブーツ、不自然な個所にある摩耗粉などを確認して、整備プランを制作しました。
・お聞きしている整備予算
・問診時に聞いた不具合点や改善ポイント
・点検から分かる要整備個所
予算と現状と今後の使用を考慮して、オススメの整備プランを制作し、予算に収まるように御見積をしています。
リフレッシュプランの本質はリフレッシュ整備をする事だけではなく、愛車をリフレッシュするプランニング(計画)にあります。
リフレッシュプランという画一的な整備メニューがある訳ではなく、各車両毎に整備計画を制作し提案する。
分かりやすくカッコよく言えば(オーダーメイドの整備提案)ですかね。
基本的には1台1台違うので、(ブログその1)で聞かれる、『リフレッシュプランっていくらですか??』の問いには正確には答えられないのです。
http://minato-motors.com/blog/?p=31100
だから過去の類似作業の概算金額を参考程度で、問い合わせ時にお伝えしているんですよね。
稀にあるのが(リフレッシュプランの作業はするか?どうか?は分からないけど、リフレッシュプランの点検と見積だけして下さい。)という依頼。
申し訳ございませんが、お断りさせていただいています。
(見積次第でやろうかな??)(乗り換えも視野に入れてる!)という曖昧な方は、絶対にリフレッシュプランのような大規模整備は止めた方がいいです。(高確率で後悔するので)
リフレッシュプランを実施する方はもう(腹は決まっています。)
長年使用した相棒をもう一度新車時に近い状態に戻す整備は、相応の費用が掛かるので、相応の覚悟も必要です。
弊社側が(どうですか~やりませんか~)と提案する前に、本人が(やりたいんだ!!)と決めている場合が多いですね。
老婆心ながら(気持ちが揺れ動いている時)は、リフレッシュプランを実施するのはまだ早いと思っています。
このようにして点検をして整備プランを制作し、お見積りも行っています。
点検結果と整備内容は箇条書きにし、御見積書はメールに添付して送信しています。
・○○の個所はこうなっていますので、このように整備します。
・△△が破損しており異音の原因はここですから、要整備個所です。
・気にしていた○○は、現時点では経過観察で良いと思います。もし整備するならこのようにしてはどうでしょうか?
PDF化した御見積書とメール文を読んでもらい、弊社に折り返しTELをしてもらいます。
お互いが御見積書を見ながらTELで整備内容を説明。
予算オーバーの部分は協議の上削除し、不足分があれば再計上します。
予算と現状を相談しながら、ベストもしくはベターな整備プランを決めるのですね。
弊社の意見を押し付ける事もないですし、ユーザーさんが勘違いしている時は詳しく説明をしていますのでご安心ください。
(もしこのハイエースが私の愛車なら、限られた予算でどのように整備するか?)
リフレッシュプランを提案する時に、いつもこの言葉を思い返しています。
一般ユーザーで車に詳しい人でも、整備手順までは詳しくない。
ドライブシャフトの整備はブレーキとハブナックルの奥にあるので、3点を同時に整備した方が重複工賃が省略されます。
サスペンションをバラバラに分解した状態なら、簡単に交換が出来るエンジンマウントも、サスペンション・ブレーキはそのままでマウントのみ交換すると大変な場合もありますよ。
整備歴や車種特有の分解手順などを整備士側が理解して、無駄な整備工賃が掛からない方法で整備プランを計画する。
個人的には無駄な工賃を使うなら、その分は部品代に充てた方が絶対良いよと思っていますので。
これでやっと予約からプラン提案・作業開始まで説明が出来たのかな。
次回ブログからは解説シリーズ(実作業編)になります。
ハイエースLH178がどのように整備して、どのようになっていくのかを解説したいと思いますね。
お楽しみに~!!HAPPY CAR LIFE!!