愛知県からハイエースKDH201 マルチサーブ前編。 ディーゼルインテーク煤堆積完全除去。 時々警告灯点灯。 DPF(DPR)再生が途中で止まる!!
愛知県からお越しいただいたのはトヨタ ハイエース KDH201 1KD-FTV 平成22年式
HP(お問い合わせフォーム)からご相談がありました。

・エンジンのフケは問題なく感じる??が、DPF(DPR)再生が途中で止まる。
・エンジン警告灯が点灯する時が時々ある。
・今まで定期的なメンテナンスをしてきたが、DPFやインテークの煤に対しては現状が分からない。
・今後も定期メンテナンスをして、出来れば長く乗りたい。
相談内容はこんな感じでいただきました。
オーナーさんはクリーンディーゼル関係のメンテナンスをどうすれば良いのかが分からず、悩んでいたそうで弊社のブログを見て相談されました。

・DPF(DPR)の警告灯が点灯していれば、DPFだけを修理すれば良いのか?
・エンジンの警告灯が点灯すれば、エンジンだけが悪いのか??
今回の整備ブログ2部を最後まで閲覧していただければ、整備の現場で何が起きているのかが分かると思います。


・入庫後に問診と作業説明。
マルチサーブとはどんな作業なのか?を作業前に説明します。
・試運転とライブデータチェック&保存
スキャンツールを接続し、各センサーやアクチェーター等の数値をチェックし保存。
試運転をしてアナログ的な感性で状態をチェック。
スキャンツールを使いデジタル的なアプローチで点検。
まずは『マルチサーブ インテークカーボン洗浄システム』から始めます。

狭いエンジンルームに詰め込まれた1KD-FTVディーゼルエンジン。
年式が変れば同じ1KD系でも、各装着部品が複雑になっていきます。
慣れた手順で『第一段階』を分解していきます。







吸気シャッターバルブ・インテークダクト・EGRバルブ・水冷EGRクーラー
煤堆積が酷い状態ですね。
特にEGRバルブにこんな堆積があると空気が吸えないですよ。


外した部品にはアクチェーター(ダイアフラム・バキュームS/W)
それらの作動テストで良否判定。 壊れていれば交換や修理をしています。
この時点で煤堆積が酷くなければ、第一段階で外した吸気シャッターバルブ・EGRバルブ等を洗浄して組み立て。
マルチサーブのケミカル洗浄工程に移行します。
ですがここまで吸気上流が酷いと、当然吸気下流も酷いはず・・・。


EGRバルブを外し、インテークマニホールドの入り口を覗く・・・。
インテークマニホールドの中も煤堆積が酷い場合は、第二段階の分解に移行。
『第二段階』
インテークマニホールドを分解。
エンジンヘッドのインテークポートの確認。




インテークマニホールドの入り口は煤でゴボゴボ。
出口のスワールコントロールバルブも酷い状態。
エンジンヘッド側のインテークポートをチェック・





インテークポート内径は煤で狭くなり、奥にあるインテークバルブは見えない・・・。
(ディーゼルエンジンは空気を吸ってナンボ)のエンジン。
こんな状態でもハイエースは走る事が出来る。
ですがどう考えても燃費・加速などは劣悪だと思います。
10万キロ以上走行して、新車時のコンディションを覚えている方は少ない。
警告灯点灯などが無ければ、人間の感覚などは曖昧では?
(距離も走っているし?こんなモノかなぁ~)と思っていませんか。








特殊洗浄機と超音波洗浄機でキレイにしました。
ディーラーさんや普通の整備工場なら恐らく部品交換でしょう。
ですが弊社はいろんな種類の洗浄装置を導入していますので、完璧に洗浄再生が可能です。
・洗浄再生が出来れば、高額な部品代が必要が無い。
・ガスケット・ゴムホース等の安価な部品のみ新品交換。




もう一度アクチェーターの作動を確認し、新品ガスケットで組立。
ではエンジンヘッド側はどうなったか??





特殊装置と手作業でポート内の煤除去。
それでも奥には硬化した煤が残っていますね。
本来であればインテークポートの煤はDSC(ドライアイスショットカーボンクリーニング)のドライアイス洗浄で完全除去したい・・・。

ですがエンジンが室内にあるハイエースでは、マツダCX-5や三菱デリカD5のようにドライアイス洗浄をすると、室内に煤が飛び散って汚してしまう。
https://minato-motors.com/blog/?p=39487
またエンジンルームも狭いので、ドライアイス洗浄のDSCノズルが入らない。
なので手作業である程度煤を除去するに留めています。

組立完了。
エンジン始動・完全暖機。
これだけだとエンジンポート内の煤は取り切れていない。
違う不具合があった場合は、その煤残留が原因の懸念も残る。
そこで次に行うのがマルチサーブのケミカル洗浄。


欧州から導入したマルチサーブ。
ガソリン・ディーゼルのインテーク・インジェクター・ターボチャージャー・DPF等をケミカルの洗浄効果でシステム洗浄が可能。
このような特殊なエンジン整備機器は日本製はあまり無い。
世界中に販売しないと開発費が回収できないので、市場規模のデカい欧州や米国の方が少し先を進んでいます。






アトマイザーコーン(噴霧器)をインテークダクトに接続。
・30秒に1回噴霧のペースでエアインテーククリーナーを噴霧し吸気に導入。
・吸気流に乗ってエンジン奥までダイレクトにケミカルが届く。
・ケミカルが固着した煤に吸着する。
・塊の煤の結束を緩めて、粒子状の煤に解れる。
・金属から少しずつ離れた煤粒子が、チョットずつ燃焼室で燃えて消滅。
約2時間ほど掛けてゆっくり洗浄工程を行います。

・一切インテークを分解せず、煤堆積の状況も確認せず。
・アクチェーターやバルブの作動テストもしない。
・煤の堆積も酷い状態。
分解無しでいきなりケミカル洗浄をしても意味無いです。
今回のように分解洗浄して、各装置の作動をチェックし、煤もある程度除去しないと、高価なケミカル剤1本だけでキレイに出来ないのですよね。


これで『マルチサーブ インテークカーボン洗浄システム』が完了。
ハイエースのディーゼルエンジンや排気系等のDPF(DPR)が悪い場合でも、整備するのはインテークから。
インテークから空気が流入し、燃料噴射で高温燃焼。
排気ガスが下流のDPFやマフラーに流れる。
上流から下流へクリアにしていかないと、故障原因には辿り着かない。
(警告灯点灯)や(再生完了しない)など、DPF(DPR)だけが悪いわけではないのです。 まずはエンジンが正常かを確かめる(リセットする)必要があるのですよ。


次回ブログでも引き続き、愛知県ハイエースKDH201のマルチサーブ洗浄システムを紹介します。
インジェクター・ターボ洗浄システム・DPF洗浄システムを紹介しますね~。
それではお楽しみ!!