ランドクルーザープラド LJ78 リフレッシュプラン。28年目のサスペンション・ハブ・ブレーキ整備。純正部品があるうちに・・・。
千葉県からお越しいただいたのはランドクルーザー プラド LJ78
平成5年 走行距離13万キロ。 (ナンバープレートは山形ですが・・。)
提案型整備リフレッシュプランのご依頼です。
http://minato-motors.com/refresh/
http://minato-motors.com/blog/?cat=12 過去の事例もどうぞ。
HP(お問い合わせフォーム)からご相談をいただいて、予約入庫してもらいました。
メールでの相談内容
・古い車ですが長く乗りたいので一度全面的に整備をしたい。
・足回りは整備歴がなく、パーツが無くなる前に予防整備をしたい。
この年式の車両をオリジナル状態で維持しているなら、要所ごとにメンテナンスをある程度は行っていたと思います。 今回は普段の点検整備時には行わない箇所を中心に整備を依頼されました。
特に28年前の車両となると純正部品がどこまで残っているかも考慮しながら整備プランを提案しないといけません。
無暗に部品を分解して(メーカー在庫無し・生産終了)となると元に戻せなくなる可能性があるので旧車の場合は注意が必要ですね。
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予約入庫から問診を行い、どのような整備を希望しているかをお聞きします。
メール予約時にも(何をどのようにしたいのか?)をお聞きしていますが、問診時には対面でさらに詳細に聞いていますので、不明な点がありましたらドンドン質問してくださいね~。
お車をお預かりしてオーナーさんは電車にて一度お帰りになりました。
(代車<ナビ・ETC付>が必要な方にはお貸ししています。)
お預かり期間は約2週間+αとお伝えしました。
(部品が滞りなく揃えば、大丈夫でしょう。)
試運転をしてから、事前ホイールアライメントを測定します。
試運転では著しく直進安定性が悪く、ステアリングセンターも大きく乱れていました。この状態で関東から大阪まで走るのは、なかなかハードだったと思いますね。
直進時でも常に修正舵が必要になり、アソビも大きくフラフラして乗りにくいし疲れやすい。 本来のランドクルーザープラドではないですね。
またブレーキングのコントロールもしずらく、制動も甘い。
なかなか手強く、遣り甲斐のある整備車両だと思いました。
ちなみに奥に見えるピカピカで極上のスバル H14年式ランカスター6も岐阜県から依頼をいただいて、総額90万円ぐらいのリフレッシュプランが完了し納車待ち。
リフレッシュプランは好評をいただいており、予約は全国各地から数珠繋ぎで依頼をいただいています。
アライメントリフトから整備リフトに移動して、リフトアップしタイヤを外す。
エンジンやAT・サスペンションにブレーキなどを点検し、オススメの整備プランを提案させていただきました。
御見積書をメールにて送信し、お互いが見積書を見ながら整備内容を説明しています。 整備プランにOKがいただけたので作業を始めますね~。
ちなみにこの時点で整備予定の部品類は入庫前に取り寄せしています。(入庫1か月前に前金をいただいて発注)
今回はシールやオーリングなどの小さな部品も含めて約80点ぐらいは在庫確認後に事前発注しました。
部品が(在庫無し・生産終了)で1点でも不足があると、予定していた作業部分が実施出来ない可能性があります。
そして予約入庫後に点検をし、プラン決定後に残りの部品を追加発注する流れになります。
まずはフロントブレーキ・アクスルから始めますね。
LJ78プラドの年式ならパワーロッキングハブが一部採用されています。
またアクスルやドライブシャフトも今の現行プラドとは形状がまったく違いますよね。
この辺りも全て分解してリフレッシュ整備しますよ~。
ハブとブレーキを分解して、アクスルのナックルケースも分解します。
同時にステアリング リンクロッド類も分解しました。
こんな感じでバラバラにします。
以前友達が弊社に遊びに来た時に(こんなにバラバラにして、間違って組み立てたり、ボルトナットが余ったりしないのか??忘れない?大丈夫??)と言われた事があります。
(俺、プロの整備士何十年やってると思ってんねん。)と軽く言い返しながら、整備の現場を見た事がない人からすれば、パッと見た感じそう思うのでしょうね。
(そりゃ無暗やたらに、適当に分解すれば忘れる事は大いにありますよ。)
私の場合は磁石が3個付いた金属トレーに、外した順番で奥から順にボルトナットを並べる方法を採用しています。
画像でみると右奥からボルトナットを円状に並べて、次は中央に並べて、左に並べる。(足りなければもう一枚トレー追加)
組付時には左のボルトナット群から順番に組付ければ、組付順や場所を間違える事は無いしボルトナットが余る事もない。
またこうすれば足回りをバラバラに分解して、次はエンジン類を整備し、1週間後に足回りを組立しても忘れる事は無い。
(一つの箱にボルトナットをガサツに全部入れたら、プロでもそりゃ忘れますよ~。)
アクスル内のインナーシャフトシールを交換して、ナックルのベアリングも新品に打替交換。
アクスルナックルのオーバーホールキットでシール類を全交換しました。
ナックルのベアリングシム調整。
5種類ある厚みの違うベアリングアジャストシムを組み合わせて、プレロード測定し組付けします。
ドライブシャフトを洗浄して、新しいハブベアリングに打替え交換。
古いB/Gを打ち抜いてケースを洗浄し、油圧プレスでB/Gカラーとシール類を装着します。
今回はフロントブレーキ ディスクローターは歪みと摩耗で、研磨での再生は不可と判断しましたので、新品ディスクに交換します。
ハブにディスクローターを組付けて、車両側に装着します。
パワーロッキングハブには専用グリス(YM-102)が必要です。
使用する量は僅かなのですが、結構高額なんですよね~このグリス。
ロッキングハブの摺動部を洗浄して、新しいYM-102を塗付しました。
ガスケット類を交換してプレロードを調整して組付完了。
ステアリングのタイロッド、リレーロッドはエンド部のガタは無かったので、ジョイントブーツのみ交換しますね。
グリスを塗り直して新しいブーツを装着。
ホイールアライメント調整時にはタイロッドエンドのネジを回しますが、長い間動かしていなかったので完全に錆び付いていました。
バーナーで熱してからラスペネ潤滑材を染み込ませて、ネジ部の固着を緩めますね。 最終的には手で回るぐらいにスムーズにして、車両側に装着しました。
(これをしないとホイールアライメント調整時に苦労しますので。)
ステアリングの遊びが非常に大きく、直進で保持するのが難しい状態でしたので、ステアリングダンパーも同時に交換します。
外したダンパーは手で伸縮させるとスッコスコ。
お役御免となりました。
リアのブレーキやハブ等も分解してリフレッシュします。
ブレーキを分解してアクスルからシャフトを引き抜きますね。
シャフトのベアリング、シール、リテーナー等を分解して交換しますよ~。
ハイエースぐらいならベアリングからシャフトを打ち抜くのは容易ですが、ランドクルーザーなどクロカンSUVになるとかなり頑丈で厄介。
ベアリングもリテーナーもハイエースより厚みが倍ほどありますので、打ち抜くのが大変なのです。
専用SSTと15t油圧プレスを使用して、シャフトからベアリングを分解して、新しいベアリング・シール等を組付けました。
リアブレーキのディスクローターは研磨機にて再生し、耐熱塗料で化粧直し。
ディスク厚は十分ありましたので、軽くの研磨で再生出来ました。
前後のブレーキキャリパーシールをO/Hしますね。
キャリパーからピストンを抜いて、全体を洗浄します。
ピストンに固着した古いグリスも洗い流し、微細コンパウンドで磨き上げ。
そこからシールとダストブーツとブレーキパッドを交換します。
ブレーキマスターシリンダーO/Hとブレーキホースも交換しました。
本当はマスターのフルードタンクも新品に交換したかったのですが、もう部品が無いようなので洗浄しシリンダーKIT交換を行いました。
ブレーキを組み立ててパーキングブレーキの調整を行います。
リンク部の樹脂カラーが破損して無くなっていたので、交換しますね。
またデフ・トランスファのギアオイルはNUTEC NC-70で交換しました。
エンジンマウントとATマウントも交換します。
外したマウントはゴムが硬化し、クラックが進んでいますね。これではエンジンの振動を吸収するのは難しいでしょう。
エンジンは今までの整備状態が良く、基本的なメンテナスは行われていたようです。
それでもシリンダーヘッドカバーからのオイル漏れがありましたので、ガスケットを交換しますね。
しかしヘッドカバーを外すにはインテークダクトとホースを外す必要がありますが、カッチカチに硬化しているので、外すと恐らく割れるはず・・・。
そんな時もホースの在庫確認をしてから、分解作業を始めます。
吸気系のゴムホースが割れていると、そこから(エア吸い)が起きて、エンジンのアイドリングが不安定など不具合を誘発しますよ。
ヘッドカバーの錆をオーナーさんが気にされていたので、在庫が有るうちにガスケット交換と同時に新品カバーASSYも交換しました。
エンジン冷却系は整備歴を見るとW/Pとヒーターホース類は交換済みでした。
今回はあきらかに動きがおかしいラジエターファンカップリングASSYとラジエーターホース、サーモスタッドを交換しますね。
組付けてからラジエターリフレッシャーでLLC圧送式交換を行い、LLCを再生します。
これでアクスル・ハブ・ブレーキやエンジン冷却ライン等の整備が完了。
一度リフトから降ろして、今度はサスペンションを整備します。
この年式のランドクルーザー系はリフトアップポイントが微妙な位置にあります。
構造上で整備リフトではサスペンション系整備が出来ないので、ガレージジャッキでリフトアップし、フレームをジャッキスタンドで保持。 この状態から前後個別にアームブッシュやショックアブソーバー等を交換します。
純正2ステージ ショックアブソーバーは結構イイ値段しますね~。
リアも同じくサスペンションアームブッシュとショックアブソーバーの交換。
また前後のラテラルロッドのブッシュも打替え交換しますね。
プロペラシャフト等のジョイント部にグリスアップをして、フューエルエレメントも交換します。
キコキコ鳴るステアリングのホーン接点部にYM-102を塗付して、摩擦音を解消しました。
ここからは仕上げの1G締付とホイールアライメント調整です。
アライメントリフトに移動して、4輪が接地している状態で1G締付を行いますね。
アームブッシュに黄色いテープが張っているのは、まだ仮止め状態の印。
1G締付で無駄なブッシュテンションを開放し、本締めしてマーキングをしますよ。
これをしないと組付けた新品ブッシュに不要なテンションが掛かり続けて、せっかく交換したブッシュが早期に劣化破損します。
部品を交換出来たとしても正しい整備作業が行われていないと、(いつまで経っても新車時の状態には戻らない)のですね。
1G締付をしてから軽く試運転をし、サスペンションを馴染ませます。
これでやっとホイールアライメント調整の準備が整いました。
・ハンター社最新鋭ホイールアライメントテスター(ホークアイWA470)
・イヤサカ ビシャモン マルチアライメントリフト
ランドクルーザープラドLJ78はホイールアライメント調整が出来る個所が少ないです。
それでも直進安定性重視で数値を整えました。
最後に試運転を行いますね。
いつものテストコースを1時間走行します。
テストコース中で路面の状態が良く、ステアリングのセンター確認が出来るポイントは4か所あります。そこを通過して4か所ともビシッと決まれば合格。
そこで1か所でも(アレ??おかしいな??)となればやり直し。
スピードの出る幹線道路・凹凸の多い住宅地の生活道路などを、グルグル試運転コースをドライブした後に、何度もリフトアップして最終確認をして納車になります。
ここまで整備すればオーナーさんなら乗った瞬間に違いが分かるでしょうね。
走りやすい・止まりやすい・疲れないランドクルーザープラドに戻ったと思いますよ~。
お世話になります。昨日はありがとうございました。
その後でございます。走行安定性が格段に良くなりました!
車重があるのでこんなものかなと思っていたブレーキもききがよくなり、
他にもこまかい気づきがたくさんありました。
まずは千葉までの道のり、往路にらべ復路は楽しく運転することができました。
整備をお願いしてよかったな、と思いました。
さらに10年間を目標に、これまでより丁寧に乗り、またリフレッシュプランをお願いしたいと思います。
どうもありがとうございました。
本日もミナト自動車ブログ 日々是好日にお越しいただきありがとうございます。
28年前の車両ですがトヨタのランドクルーザーだから、純正部品が残っていたような気がします。
トヨタでもマイナーな車種や他のメーカーの車両なら、28年前の部品がここまで在庫しているか?は疑問ですよね。(在庫が無いマイナー車種ならおそらく依頼を引き受けていなかったと思います。)
旧車の部品在庫管理はメーカーも負担が大きいので、いつか生産終了で純正部品では整備が出来なくなる時が来るでしょう。
そういう意味で今回はこのタイミングでオーナーさんは千葉県から大阪府のミナト自動車に依頼されたのだと思います。
こちらこそご利用いただきありがとうございました。
長く愛用してくださいね~。
リフレッシュプランのご依頼はHP(お問い合わせフォーム)からお待ちしています。
(ですがR3年6月現在は多くの台数の予約依頼を承っていますので、一部新規予約を制限しています。どうぞご理解の程宜しくお願い致します。)
それではHAPPY CAR LIFE!!