ATF交換&DSC 。 マツダCX-5 一泊二日のお預かり作業。 やはりその道のプロなら知っている。
(ご迷惑が掛かるかもしれないので、ナンバープレートは伏せてます。)
某県からお越し頂いたのは
マツダ CX-5 KE2AW
走行距離 87000km
・ATF圧送式交換 for NUTEC NC-65
・DSC(ドライアイス・ショット・カーボンクリーニング)
の依頼です。
まずはATF交換から行いますね~。
試運転をしてATFチェック。
自社製作の専用アダプターを接続すれば、
sky-dr 6速密封式ATでも
交換効率の高い圧送式交換が可能になります。
このATには定番プレ洗浄油のアイシンAFW+を使用せず、
sky-dr専用のプレ洗浄ATFを使用。
純正油よりハイスペックATFですが、贅沢に使用します。
(銘柄は内緒です。)
本命ATFを使用する前に、規定容量分をイッキに交換しますね。
新油と比べるとマダマダですが、
廃油と比べればかなりキレイになりましたね。
ここから15分ほどアイドリングをして、
本命ATFをATFチェンジャーにセットします。
NUTEC ニューテック 最高峰ATF 『NC-65』
全化学合成ATF(エステル系)
添加剤等に頼ったボトムアップをせず、
エステル系全化学合成油をベース基油に使用して
油膜性能の強化。
純正ATFの数段上の油膜性能は、
おそらく市販ATFの中でも最強でしょう。
(お値段も数段上ですが・・・)
もともと高トルク大排気量の輸入車多段ATや
フルードに高負荷が掛かるDCT用に開発されたようですよ。
ディーゼルの高トルクを受け止めるには、
NC-65はベストATFかもしれませんね。
もう一度全量圧送式で交換します。
キレイに入れ替わりましたね。
これで95%は入れ替わっていると思いますよ。
注意
NC-65は薄緑色で色味が弱いです。
プレ洗浄油の赤色が少しでも混ざると
色までは完全に入れ替わりません。
一般走行レベルならロングライフ化になり、
次回推奨交換時期は6万キロになります。
マツダ ディーゼルエンジンsky-D 2.2D の
吸気経路に溜まる煤の除去作業(DSC)に移ります。
この作業は去年だけで結構な台数を施工済み。
ほとんどが一般ユーザー様からのオーダーなのですが、
3名ほどマツダディーラー営業マンからの依頼もありました。
エンジンを全交換やOH以外の方法で
DSCをせずにあの煤を除去するのは、ほぼ不可能。(たぶん・・・)
自分の愛車の煤がどこまで溜まっていて、
除去すればどうなるか?非常に興味があると依頼されました。
オフレコ話が多いのでネットでは公開はできませんが、
いろんな話が出来て勉強になりました。
まだまだ私も勉強不足ですね。頑張ります。
ちょっと脱線しました。
作業紹介に戻ります。
慣れた手順で各部品を外して、
インテークマニホールドを取り出します。
そこから吸気シャッターバルブを分解して、
煤の状態をチェックしますね。
吸気シャッターバルブの煤の量は、
走行距離の割には少なめ。(経験上)
インテークマニホールドの入り口
(EGRと新気の合流点)は平均的な蓄積でしょうか。
インマニ内部はススとオイルで固着しているので、
ひとまずホジホジして回収します。
回収量はコーヒー缶約1本分ぐらいかな。
エンジン側インテークポートも覗いてみますね。
こちらも平均的な蓄積量で、
多からず、少なからずという感じです。
(ただ走行距離を考慮すれば、少ない方かなと?)
(問診時に聞いたの燃費・DPF再生距離ならもう少し溜まっていても?)
ドライアイス3mmペレットを
圧縮空気で高速噴射。
ドライアイスの特性を
最大限利用した(ドライアイス洗浄)
軽くワンショット。
ペレットが直撃した部分だけ
キレイに剥離しましたね~。
ドライアイス洗浄はサンドブラスターとはよく似ていますが、
洗浄する原理が全く違います。
サンドブラスター等は硬いメディアを打ち付けて、
研磨力でキレイにしています。
(母材に傷が付きます)
ドライアイスペレットは非常に柔らかく、
指で潰せるほどの硬さ。
熱収縮と昇華爆発力を利用して、
固着した異物(煤)を母材から剥離します。
(母材は無傷ノーダメージです。)
あまり馴染みのない洗浄方法ですが、
各製造業・加工産業では既に多くの企業が採用しているそうですよ~。
一般自動車整備業で数年前からこの洗浄方法を
活用しているのはおそらく弊社だけでしょう。
(自社調べ) (レストア業者は別ですが・・・)
自社導入にはいろんな障壁があるので、
なかなかこの洗浄機に手が出せない(出さない)ですね。
(手を出した整備工場はきっと変わり者でしょう。)(笑)
DSC専用ノズルを使い分けて、
ポート内径とバルブをキレイにしました。
もちろんバルブ傘部に固着したススも
キレイに除去しています。
ほどほどにホジホジしたインマニも、
DSCでキレイに洗浄。
内部形状が複雑なので、
手作業ではキリがない。
ドライアイス洗浄機なら楽勝です。
電子制御の吸気シャッターバルブやEGRバルブも
DSCでスッキリ洗浄。
再使用不可能な部品はガスケットのみ。
純正ガスケットを使用して再組付けしました。
エンジンを完全暖気させて、
各学習値を初期化。
インジェクター噴射補正学習も行います。
sky-DのDSC作業は一泊お預かり。
sky-dr6速のATF交換は約半日。
2つを同時に作業したこのCX-5は、
朝一入庫で翌日お昼過ぎの納車になりました。
今までの作業経験上では走行距離に対して、
蓄積量が少なかった今回のCX-5。
作業後オーナーさんに
作業内容は画像を交えて説明しました。
すると帰り際に
(実は私の仕事は○○のディーゼルE/G開発の部門で勤務しています。)
とお話してくれました。
自動車ではないディーゼルエンジン開発に携わっているそうで、
開発現場ではもっと過酷なテストをし
酷い煤蓄積事例もあるそうです。
おそらくディーゼルのスス問題は
そんな簡単には解決しないのでしょう。
ディーゼルの主戦場が
貨物・重機・船舶などの大型エンジンになるので、
微妙なフィーリングの低下は
気が付かないし(気にもしない)のですね。
小排気量の小型エンジンはそのあたりが表面化しやすく、
自家用車ゆえに違和感が分かるのだと思います。
おそらくこのオーナーさんは職業柄、
なるべく煤が溜まらない走行を意図的にされていたのでしょう。
やっと煤が少ない理由に合点しました。
去年の春にsky-DのDSC作業始めてみると、
良くも悪くも反響が大きかったですね。
DSCはガソリン直噴用に開発した作業なので、
最初は触った事もないディーゼルE/Gのため、
ヤンワリお断りしたのですが・・・。
アテンザ赤オーナーさんの熱意に負けて作業させて頂きました。
http://minato-motors.com/blog/?p=9900
そして依頼は全国各地から
高速道路を使い大阪まで来店し、
決して安いと言えない作業料金の出費。
納車帰宅後にビフォーアフターのメールを貰い、
感謝の言葉もメールに添えられると、
整備士冥利に尽きますね。 感謝感謝。
まだまだ分からない事が多いエンジンですが、
町の小さな整備工場なりの経験で勉強していきたいと思います。
それではHappy Car Life!!