故障整備事例から見る自動車整備業界。 あなたの業界はどうですか? (長編です。)
故障整備事例というものが
各自動車整備業界団体 や 各スキャンツールのユーザーサイト
に多数掲載されています。
簡単に言えば
(この車が このような症状で こんな整備をして 直りました。)
と事例報告されたものを
公開してくれているのです。
上記画像を説明すると
H20年式 キューブの、エンジン警告灯が点灯してA工場に入庫した。
日立製スキャンツール でダイアグコード(エラーコード)を見てみると
(P0340 カムポジションセンサー異常)が表示され
配線等は問題なかったので
センサーを交換したら完治したよ!!
と書かれています。
こちらも年式は違いますが
同一車種、同じ症状でB工場に入庫。
B工場もスキャンツールでダイアグコードを確認して
データモニタ機能を利用し、走行テストを繰り返したようですね。
Z11キューブの定番故障 (タイミングチェーンの磨耗による伸び)
も考慮しながら
ヒーターガン等でセンサーを加熱、
異常再現を確認して 交換後
完治したようです。
A工場もB工場も異常個所を診断し
不具合を直して修理完了していますね。
お客様も満足されていると思います。
A工場はダイアグコードを信用し
配線チェックのみでセンサーを交換。
B工場はダイアグコードと
この車種の定番故障も考慮しながら
センサーに熱を加えて症状を再現し
故障箇所を特定。
それからセンサーを交換。
実際の作業を拝見していないので
文面のみを見た感想で言うと
A工場はたまたま解決できたが
故障診断としてはあまり宜しい判断ではないと思います。
B工場は手順としては問題ないが
最終確認にオシロスコープでの波形確認があれば
なお良かったと思います。
(P0340) というダイアグコードは
カムポジションセンサー異常ではなく
カムポジションセンサー系統異常なんですよね。
つまりセンサーだけではなく
カプラーの接続状態や
2番~4番、1番~29番、3番~32番の断線、短絡
IGコイルリレーや
最悪の場合 ECUの不良の可能性も有りえるのです。
ダイアグコードはあくまでも参考程度・・・。
(Tチェーンの伸びでも、同じダイアグコードが出ますので)
A工場の配線チェックは
どの程度まで調べたのかは不明ですが
14、29番のECU側までは調べていないような気がします。
(調べていてたらスミマセン、謝ります ごめんね!)
スキャンツールは万能の故障診断マシーンではないのは
以前ブログで紹介したと思います。
http://minato-motors.com/blog/blog-entry-278.html
B工場も間違っている訳ではないですが
データモニタのVTC駆動とVTC角度のチェックに
追加でオシロスコープでの最終チェックが有ればGOODかな~。
私は心配性なので、たぶんそうするでしょうね。
ここでやっと今回のブログ本題に入ります。 (長くなりましたね~。)
カムポジションセンサーの部品代は2540円。
センサー取付箇所もエアクリケースを外せば
ボルト1本外すだけで交換できます。
お客様への請求金額は一体いくらになるのでしょうかね?
A、B、そして私
3者ともに故障原因が特定しましたが
その診断方法や手順などは同じなのでしょうか?
もしECU側14番付近の接触不良なら?
もしIGコイルリレーの32番付近の異常なら?
Tチェーン伸びでのダイアグコード発信なら?
センサーを交換しても完治はしない。
A工場が文面通りのセンサーカプラー付近の
目視チャックぐらいしかしていなければ
誤診していた可能性はあるでしょうね。
ですが結果だけで見てみると
ただのセンサー不良交換作業に
3者ともなりますよね。 (ユーザー側から見れば同じだと思います。当然です。)
部品代と交換工賃
そして診断料に違いが出るでしょうか?
おそらくこの場合なら金額差は、ほとんどないでしょう。
そして内情を知らなければ
A工場はスグに完治納車出来たのに
ミナト自動車は作業(診断)するのが遅いと
怒られるかも?しれませんね。
自動車整備の中で
一番難しく高度な知識が必要なのが
故障診断作業と思っています。 (個人的にですが。)
そして時間に対して、利益が薄いのも
故障診断作業なんですよね~。
(掛かった時間分を請求する訳にもいかないですし~。難しいね。)
エンジンのオーバーホール。
純正サスを車高調に組み替え。
ベルト、フィルターなどの一般交換整備。
上記の作業と比べると
視覚的、性能的に地味すぎて
日の目に当らない作業。
メカニック と チェンジニア。
経営者的観点 と 整備士の技術向上。
矛盾と反発で葛藤する
自動車整備業かな・・・。
あと数十年後
直せない整備士 と 壊れない自動車が量産されれば
こんな事を考える必要も無くなるでしょうかね。
今回はお客様側のお話ではなく
こちら側(整備業界)の私的なタトエバナシ。
あなたの業界ではどうですか。
追記
センサーの価格 と イロイロ調べる時間や手間などを考えると
逆にさっさと交換した方が良い との考え方もあると思います。
でもセンサーじゃなかった場合や
取り付け場所が奥の方にあり困難が予想される場合は
安易な交換は出来ないので その辺りは臨機応変で・・・。